三味線「音色の秘密:西洋楽器との違い」— 自然の音と三味線

本内容は、2019年3月に行なった解説付きコンサート「三味線の音色と美意識」〜今昔の音色の解説と演奏〜をユーチューブ動画化した内容です。動画では三味線と西洋楽器の決定的な違いを「楽器に自然の音を込める」という視点から整理します。 三味線の音色は〈雑味〉〈聴こえない音〉〈ゆらぎ〉の三要素で成り立ち、天然皮の胴やサワリが複雑な倍音・ノイズ成分を生み出します。 さらに、耳で聴こえる帯域を超える高周波が身体感覚に作用し、心身の状態や“伝統芸能に必要な在り方”へ影響し得るという仮説も提示します。 一方で、大量生産品や西洋楽器を模した設計は均質で「ゆらがない音」に寄り、江戸〜昭和初期(戦前)の「生きている音色」から遠ざかった——という問題提起へ接続します。

講座紹介(概要)

本動画は、三味線の音色を「自然の音を楽器に込める」という観点から再定義し、西洋楽器の設計思想(ノイズの排除/可制御性の重視)との違いを明確化します。 中核となる整理は三点です。第一に〈雑味〉。天然皮の胴(太鼓)が弦音を複雑にし、サワリが“触れる”ような雑味を加えることで、単なるピュアな音ではない「親しみ」を立ち上げる。 第二に〈聴こえない音〉。三味線の周波数成分は複雑で、耳の可聴域を超える高周波を含み、身体がそれを捉えて心地よさに繋がる可能性がある。 第三に〈ゆらぎ〉。生命のリズムのような不均質さが音色に宿り、伝統芸能に必要な“委ねる”態度と相性が良い。 これらが近代以降の大量生産・西洋模倣で忘れられ、音色が均質化してきたという歴史的見取り図を示し、最後に「モノは嘘をつかない」という制作・稽古観へ収束します。

この講義で立ち上がった問い

内容の記録

Ⅰ.はじめに:テーマ設定

・三味線と西洋楽器の決定的差を「自然の音を込める」という観点で捉える

Ⅱ.楽器に自然を込める/明治以前の日本人

・自然と自己を分けない感覚(岡潔の言葉の引用)を手がかりに、三味線の成立背景を示す

Ⅲ.自然を込める3つのポイント

・三味線の音色を〈雑味〉〈聴こえない音〉〈ゆらぎ〉の3要素として整理する

Ⅳ.(1)雑味:日本人の親しみとしてのノイズ

・西洋的にはノイズとされがちな成分を、三味線は美として扱う

Ⅴ.雑味を創る機能:①天然皮(胴=太鼓)

・弦音を胴で響かせることで、複雑な成分(雑味)が立ち上がる

Ⅵ.雑味を創る機能:②サワリ

・「心に触れる」とされるサワリの仕組み(山サワリ/東サワリ)を示し、雑味の核として位置づける

Ⅶ.(2)聴こえない音:可聴域を超える成分

・音は振動であり、周波数成分として捉えられる。三味線は複雑で、可聴域外の成分を含む可能性が示される

Ⅷ.本来三味線の音色は:身体と心身状態への作用(仮説)

・自然音が意識状態に影響する可能性に触れ、伝統芸能に必要な心身の在り方へ接続する

Ⅸ.(3)ゆらぎ:生命のリズム

・自然と生命は揺らいでおり、三味線もまた揺らぐ。機械的な可制御性とは異なる価値を提示する

Ⅹ.大量生産品(ゆらがない三味線)と西洋模倣

・均質化・可制御化が進むと、三味線固有の要素(雑味/聴こえない音/ゆらぎ)が薄れる

Ⅺ.三味線の現在:独自性が見えにくくなった背景

・大量供給・機械製作・海外製造・人工素材化等の流れが、音色の方向性に影響したと整理する

Ⅻ.江戸〜昭和初期(戦前)の音色/モノは嘘をつかない

・古い三味線の修復経験を通じて、音色の実態が「モノとの対話」で立ち上がるという立場を示す

ⅩⅢ.まとめ:生きている音色と、演奏の問い

・自然の音色が込められた三味線を「生きている音色」と定義し、聴き手の“聞こえ方”が変化するという結語へ導く

※ご注意:本動画で扱う「聴こえない音」は、音響計測と身体感覚の接続を含むため、説明上は仮説・作業仮説として提示されています。 また、再生環境(スマホ/PCスピーカー等)では可聴域外の成分が再現されにくく、理解の要点は「生音の体験」とセットで立ち上がります。

初公開:2021-06-07(YouTube) / 最終更新:2026-01-19