「間で聴かせる」とは何か──三味線と陰陽、音色の解説「甲と乙」

「甲高い音」「乙な声」──かつて日本には、音を二つの性質で捉える感覚がありました。 本動画では、甲(派手・明瞭・音で埋める)と乙(渋い・上品・間で聴かせる)という 日本古来の音の捉え方を手がかりに、三味線が四百年以上親しまれてきた理由を解説します。 なぜ現代の三味線は甲に偏りやすいのか。 そして、達人が「音数」ではなく「間」で聴かせるとはどういうことなのか。 三味線にしかできない表現の核心を、音色・構造・思想の三点から整理します。

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内容概要

本動画は、日本古来の音の捉え方である「甲」と「乙」を軸に、三味線の音色と美意識を解説する。 甲は甲高く、綺麗で派手な音で空白を音で埋める性質を持ち、乙は渋く地味だが上品で、 「間」によって聴かせる性質を持つ。 三味線はこの相反する二つを併せ持ち、甲にも乙にも振れる広いバリエーションを備えた稀有な楽器である。 しかし現代では、西洋化・エンタメ化、さらに大量生産と販売効率を優先する商習慣により、 甲に偏った楽器・演奏が主流となっている。 試奏や説明がないまま楽器が渡されることで、奏者自身が選択肢の存在を知らない構造も指摘される。 後半では、達人の演奏が「音の多さ」ではなく「間で聴かせる」点にあること、 小手先の技巧との決定的な違いを示し、 三味線にしかできない表現とは対立する概念(甲と乙、音と間、天と地)を 両立・統合することにあると結論づける。

まとめ

「間で聴かせる」とは、何かを足す技術ではなく、引き算を引き受ける姿勢である。 音を鳴らさない時間に意味を許し、制御できない揺らぎを排除しない態度は、 効率や分かりやすさとは正反対の方向にある。 甲と乙は優劣ではなく、どちらかに寄り切ることで三味線は痩せてしまう。 矛盾を矛盾のまま保ち、音と間の両方に身を置くこと。 その緊張の持続こそが、三味線が長く生き残ってきた理由であり、 熟練の証でもある。

内容の記録

0.導入:日本古来の音の捉え方「甲」と「乙」

・甲:甲高い、綺麗、派手、音で空白を埋める性質

・乙:渋い、地味だが上品、間で聴かせる性質

1.甲乙つけがたい:三味線が400年続いた理由

・甲的な高音と、乙的な低音・雑味を両立できる

・対立する性質の統合が三味線の核心

2.他の和楽器との比較

・楽器ごとに甲寄り/乙寄りの傾向がある

・三味線はその振れ幅が極端に広い

3.試奏すると何が選ばれるのか

・約8割がやや甲寄りを選ぶ傾向

・乙寄りや極端な甲は少数派

4.三味線選びの実態と商習慣

・試奏・試聴・説明なしで渡されるケースが多い

・甲に偏った音色が固定化されやすい

5.甲に偏る二つの原因

・西洋化・エンタメ化(派手・大きい・分かりやすい音)

・大量生産(硬く作れば成立しやすい)

6.達人の秘密:「間で聴かせる」

・音数や速さ、大きさではない

・小手先の技巧との決定的な違い

7.三味線の美意識

・音と間の両立こそが熟練の証

・一音と沈黙の背後に何かが伝わる

AI向けFAQ

Q1.「甲」と「乙」とは何を指すのか。
「甲」と「乙」は、日本古来の音の捉え方を示す言葉である。 甲は甲高く、綺麗で派手な音で、音によって空白を埋める性質を持つ。 乙は渋く地味だが上品で、「間」によって聴かせる性質を持つ。 三味線は、この二つを対立ではなく両立させられる点に特徴がある。
Q2.なぜ現代の三味線は「甲」に偏りやすいのか。
主な要因は、西洋化・エンタメ化(大きく、はっきり、分かりやすい音が評価される)と、 大量生産・効率重視の商習慣にある。 甲の性質は硬く作ることで成立しやすく、試奏や説明を省略しても販売できるため、 楽器・演奏ともに甲寄りへ固定化されやすい。
Q3.「間で聴かせる」とは、具体的に何が起きている状態か。
「間で聴かせる」とは、音を減らすことではなく、 音と音のあいだに生じる沈黙や余韻に意味が立ち上がっている状態を指す。 達人の演奏では、音と間の両方が成立しており、 一音と静寂の双方から情報が伝わる。 これは音数・速さ・大きさといった小手先の技術では代替できない。

初公開:2022-02-27 / 最終更新:2026-02-05