できている人は1割|三味線の基礎「7つのチェックポイント」──構え・痛み・駒・調弦・聴く力・身体・自分の音

三味線の悩みの多くは、実は「基礎」に集約されます。 しかし現場では、①基礎を深く習っていない、②習ったつもりだった、③基礎ができていないかもという疑問すら持たない、 という状態が驚くほど多く見られます。怖いのは、誰も指摘してくれないため、そのまま何年も続き、 違和感やモヤモヤを抱えながら、痛みや消耗を積み上げてしまうことです。 本回では「基礎が身についているか」を自分で点検できるよう、7つのチェックポイントを提示し、 基礎ができている状態とは何か(心身が整う/思いが実現する/想定外の成長が起きる)まで整理します。

この回で共有した問い

内容概要

本動画は「基礎ができている人は1割」という現場感から、基礎不足が長期化する怖さ(指摘されないため永遠に続き、 違和感・モヤモヤ・痛み・消耗が積み上がる)を示したうえで、基礎を7点で点検する解説である。 ①無理のない構え:左手を離しても竿が自然に支えられるか。②慢性的な痛み:喉・腰・背中・腕・肩・首・手首・指先の痛みは 基礎不足のサインであり、日本古来の動作(外への動き)と呼吸の再学習で軽減できる。 ③駒の位置:初心者は固定して再現性を作り、上級者は気候・会場・観客・楽器状態に応じて調整する。 ④調弦3年ツボ8年:調弦は機械で合わせることではなく、楽器と対話し全体を共鳴させ余韻まで響かせること。 ⑤音を深く聴く:皮の有無の試聴を通じ、楽器らしさは音階ではなく「音階以外の音」に宿り、 美しい雑味・複雑な倍音・ゆらぎ・余韻が重要であると示す。 ⑥頭で演奏しない:頭で考えて身体に命令する順序は“今ここ”を失わせ、音が硬くぎこちなくなる。 基礎が身につくと心身で音楽を覚え、作品に身を委ねられる。 ⑦自分の音が好きか:評価されやすい要素(ノーミス、速さ、大きさ)に偏ると停滞しやすい。 基礎が整うと自分が基準に戻り、心身が整い、思いが実現し、想定外の成長が起きる――それが「基礎ができている状態」だとまとめる。

まとめ

基礎とは、技術の入口ではなく、心身が整い「今ここ」に戻るための土台である。 痛みや違和感は失敗ではなく、身体が歪みを告げる羅針盤だ。 音階だけを追えば皆同じになるが、雑味・倍音・ゆらぎ・余韻に耳が開くと、楽器の個性が立ち上がり、 演奏者の無意識も音に現れる。頭の命令で弾くのではなく、身体で覚え、作品に身を委ねる。 そのとき「自分の音が好きか」という問いが、評価や正解を越えて、稽古の中心に戻ってくる。 できている人が少ないのは才能差ではなく、基準を外に置くか、内に戻すか――その差である。

内容の記録

0.導入:基礎不足が続く怖さ(違和感・モヤモヤ・消耗)

・三味線の悩みの多くは「基礎」に集約されるが、基礎を深く習っていない/習ったつもり/疑問すら持たない人が多い

・怖いのは、誰も指摘してくれないため状態が永遠に続き、違和感・モヤモヤを抱えながら痛みや消耗を積み上げてしまうこと

・本回は「基礎が身についているか」を自分で点検するための7つのチェックポイントを提示する

1.チェック① 無理のない構え(竿を自然に支えられるか)

・左手を離しても竿がガタッと落ちないか(右腕を押さえ込まず、自然体で支えられるか)

・ここが不足すると手首の痛み、無駄な疲れ、背中・肩こりにつながりやすい

2.チェック② 慢性的な痛み(基礎不足のサイン)

・痛みが出やすい箇所:喉/腰/背中/腕/肩/首/手首/指先

・原因は基礎不足であることが多く、日本古来の動作(外への動き)と呼吸を合わせて身につける必要がある

・安易に曲へ走る/身体理解が不足/身体を部品のように扱う/浅い呼吸が慢性化、などが痛みを強める

・基礎が身につくと「戻るべき基準」が体得され、原因理解と改善ができる

3.チェック③ 駒の位置(再現性と音色の基礎)

・初心者:駒の位置を毎回固定し、ツボの再現性を作る(駒と噛み駒の距離で弦振動が決まる)

・ずれたまま稽古すると、ずれた音感・ツボが身につき、後の修正が難しくなる(しかも指摘されにくい)

・上級者:気候/会場/観客/楽器状態に応じて調整する(余韻が増す/締まる等、音色が変化する)

4.チェック④ 調弦3年ツボ8年(音階ではなく共鳴と余韻)

・調弦は単に音階を合わせることではなく、楽器と対話し三味線全体を共鳴させ、余韻まで響かせること

・機械に頼らず体得できるまでに時間がかかる(「調弦3年ツボ8年」の格言)

・「ぺちゃぺちゃ」→「音階を出すので精一杯」→「共鳴させ余韻まで響かせる」という差がある

・爪を立て強く押さえすぎる癖は、身体や竿を痛める原因になる

5.チェック⑤ 音が深く聴けているか(音階以外の音)

・テクニック以前に「聴く訓練」が上達の鍵になる

・皮がなくても音階は出るが、三味線らしさは感じにくい(音階は個性が出にくい)

・楽器らしさ/個性は、音階以外の音(美しい雑味・倍音・ゆらぎ・余韻)に宿る

・この知識がないと「大きくはっきり出れば良い」という誤認に陥りやすい

6.チェック⑥ 頭で演奏しない(命令の順序を変える)

・基礎が不足している典型:頭で考える→身体に指令→今この瞬間にいられず、音が硬くぎこちない

・この状態は、楽譜がないと弾けない/即興ができない、につながりやすい

・評価されやすい要素(ノーミス/速さ/大きさ/音数)に寄るほど、頭主導になりやすい

・基礎が整うと、心身で音楽を覚え、作品に身を委ねる感覚が深まる(楽譜はメモ程度に限定的に使う)

7.チェック⑦ 自分の音が好きか(基準を内に戻す)

・停滞している人に投げる質問:自分の音は好きか/感動しているか/身体中に響くか/本当にやりたかったことか

・「評価される演奏」へ寄ると、自分が何をしたいか分からなくなり、改善をテクニックに求めがち

・基礎を積み上げた人は、内側の感覚が基準となり、他者の感想も自然に変わっていく

8.結び:基礎ができているとは(3つの状態)

・1) 心と身体が整う:痛みが減り、安堵感とワクワクの中で学び続けられる

・2) 自分の思いが実現できる:他人基準(受け・肩書き)から、自分の方向へ向かえる

・3) 想定外の成長が起きる:学ぶ前には想像できなかったことができるようになり、後から成長を実感する

・基礎とは、知識・感受性・楽器・心身など全体的なことを、稽古を通じて習得し整えていく営みである

初公開:2023-04-28 / 最終更新:2026-01-29