問いの集約
なぜ50〜60代に三味線を始める人が多いのか?──「深みのある演奏へ」ミドル・シニア世代の始め方/学び方/学び直し
三味線は「大人の楽器」と言われ、始める年齢で最も多いのは50〜60代(次いで30〜40代)です。 それは単に時間ができたからではなく、心身の成熟と、三味線の音色が響く条件が重なりやすいから。 本回では、三味線の音色の特性(複雑な倍音・余韻)と、年齢による聴力・感受性の変化を手がかりに、 ミドル・シニア世代が「深みのある演奏」に向かうための入口(指導者/楽器/学び方の決め方)を整理します。
この回で共有した問い
- ・なぜ三味線は、若い世代よりも50〜60代に始める人が多いのか。
- ・三味線の音色は、ピアノなどの西洋楽器と何が違うのか(倍音・余韻・陰影)。
- ・年齢を重ねると「聴力」「感受性」はどのように変化し、音の捉え方はどう変わるのか。
- ・始める前/学び直す前に、何を決めておくべきか(ジャンル・目的・環境)。
- ・深みのある演奏へ向かうために、指導者と楽器の出会いはなぜ重要なのか。
- ・自分に合った楽器とは何か。音色との出会いをどう見つければよいのか。
- ・体力・筋力の変化がある中で、長く続けるための「現実的な選択」は何か。
内容概要
三味線を始める年齢で最も多いのは50〜60代であり、本動画はその理由を「大人にしかできない深みのある演奏」 と「成熟した学び」の観点から解説する。結論は二つ、①優れた指導者に出会うこと、②自分に合った楽器に出会うこと。 三味線の音色は非整数倍音を含む複雑な響きが特徴で、明治・大正期の音色にも触れつつ、ピアノのような雑音の少ない “ピュアな音”とは異なる価値を示す。年齢を重ねると高音域の聴力が落ちる一方、経験上は複雑な音や微細なニュアンスを 感知しやすくなる傾向があり、加えて余白・影・因といった要素への感受性が高まるため、三味線の響きが深く訴えかける。 学ぶ前には演奏ジャンルを大まかに決め、目的(仲間づくり/部活的な学び/芸術性・個人の充実)に応じて場や先生を選ぶ。 楽器との出会いは①生音のエネルギーを浴び、身体の反応を手がかりに音色を選ぶ、②自分と同世代の楽器に出会う、 ③大切な人の楽器を修復して受け継ぐ、の三つを提示。さらに、筋力の変化を踏まえた棹の選択(太棹に固執しない等)にも触れ、 焦らず丁寧に稽古し「自分にしか出せない音色」を育てることが深みにつながると結ぶ。
まとめ
三味線は、音数の少なさと動作のシンプルさゆえに、ごまかしが効かず、意図や無意識が音に現れやすい。 だから「深み」は、速さや派手さの競争ではなく、一音の質を見つめ続ける時間の中で立ち上がる。 ミドル・シニア世代は、失われるもの(筋力・若さ)と引き換えに、余白や陰影を引き受ける感受性が増し、 音の複雑さを“価値”として受け取れるようになる。入口を誤らず、指導者と楽器の必然的な出会いを整えること。 それが、三味線を通じて自分自身と対話し、やがて自分という枠を超えた世界に触れていくための、現実的で誠実な道筋となる。
内容の記録
0.導入:三味線は大人の楽器(50〜60代が最多)
・三味線を始める年齢は5歳〜80代まで幅広いが、最も多いのは50〜60代(次いで30〜40代)
・「70歳で花が開く」──技術だけでなく人としての成熟が深みの演奏につながる
1.二つの結論:深みのある演奏に不可欠な条件
・結論① 素晴らしい指導者に出会うこと
・結論② 自分に合った楽器に出会うこと
・この二つが揃わなければ、努力量だけでは深みに到達しにくい
2.三味線の音色の秘密:ピアノとの違い(複雑な倍音)
・ピアノ:雑音が少ない“ピュアな音”
・三味線:複雑な倍音(非整整数倍音)が多く、陰影や余白を含む
・明治・大正期の音色に触れ、時代の響きの違いも示す
・不揃い・荒さに見える響きの中に、侘び寂び/余情/陰影性が宿る
3.年齢を重ねると分かるようになること:聴力と感受性の変化
・理由① 聴力の変化:高音域は落ちる一方で、複雑な音や微細なニュアンスを捉えやすくなる傾向
・理由② 感受性の変化:分かりやすさだけでなく、余白・影・裏側・因に惹かれる
・深みという意味での表現力は、人生経験の豊かな世代で活性化しやすい
4.学ぶ前に決めること:始め方/学び直し方(演奏ジャンル・目的)
・まず大まかに「どの演奏ジャンルを学ぶか」を決める(入口が学びの成否を左右する)
・多くの先生は一つのジャンルしか教えられないため、未決定の人は幅広いジャンルを扱える場も選択肢
・目的の整理:①仲間づくり(公共施設・サークル)②部活的(大手スクール・家元制度)③深み(優れた指導者)
・深みを目指すなら、指導者の質を妥協しない(挫折原因の大きな部分は入口の誤り)
5.三味線との出会い:必然性を見つける三つの手がかり
・(1) 自分に合った音色との出会い:生音のエネルギーを浴び、耳だけでなく心身の反応を観察する
・(2) 自分と同じくらいの年齢の楽器:年月を生き抜いた響きが不思議と心に触れる
・(3) 大切な人が使っていた楽器の修復:継続しやすく、深まりやすい傾向
6.ミドル・シニア世代の現実的な選択:体力・筋力と道具
・年齢とともに筋力・握力は落ちるため、大きすぎる/重すぎる楽器は不向きな場合がある
・津軽=太棹に固執せず、中棹で楽しむ選択もある
・体格や筋力に応じて棹の長さ等を調整する例もある
7.深みのある演奏へ:自分にしか出せない音色
・焦らず、じっくり丁寧に稽古に取り組む(自分に合う楽器が前提)
・心身一如:心と体はつながり、身体から心へ働きかけることもできる
・三味線は本当の意味で音を出すのが難しいが、その難しさが自分と向き合う場になる
・一音一音が複雑なため、メロディよりも音の質が相手に届き、無意識が音に現れる
8.学びの時間:一音に何年も取り組む喜び
・一音を美しく出すことに数年取り組む例
・一曲を仕上げるまでに数年かけ、自分にしかできないことを見つめ直す例
・同じ曲を5年以上弾き続け、変化を観察する例
・速さや正確さを競うのではなく、人生が音色として表れ、統合されていく喜びがある
9.結び:音を通じた自己との対話(深みのある演奏)
・派手さや力任せに頼れない分、演奏はより純粋に自分自身を映し出す
・自分の反省や人生の道のりが音に託され、深まりが統合されると自分の枠を超えた世界に至る
初公開:2025-10-11 / 最終更新:2026-01-26