問いの集約
合同稽古──自分の能力を最大限発揮できる身体を取り戻す
今回の合同稽古では、まず「目を瞑って演奏できますか?」という導入ワークから入りました。
演奏とは、頭で理解しているだけでは成立せず、身体の中に楽器や動作の地図があり、思った通りに身体が動くことではじめて成り立ちます。
そのうえで本稽古では、脳・神経・筋肉・感情・反射・癖といった観点から、無意識と身体の関係を見直し、
自分の能力を最大限発揮できる身体、自分にしかできない表現が立ち上がる条件を探っていきました。
概要
本合同稽古の中心には、「自分の能力を最大限発揮できる身体を取り戻す」という主題がある。
ここでいう身体とは、単に筋力や柔軟性の問題ではなく、脳・神経・筋肉・感情・情動・反射・癖まで含んだ全体としての身体である。
人は、自分が慣れ親しんだ神経回路を繰り返し使う傾向があり、そのことは身体の使い方だけでなく、感情の出方、人間関係、芸の出方にも深く関わっている。
そのため、演奏も年月が経つほど、いつもの弾き方、いつもの音、いつもの表現へと固定化しやすい。
本稽古では、そうした馴染みのある神経回路から一度外に出るために、他者・偶然・場の力を用いながら、
原始反射の解除や身体のブロックの解除を通して、より率直な身体、自分の欲求や感覚がわかる身体を目指した。
さらにその先に、自分が本当にやりたいこと、自分の未完了の何か、自分の環世界の外にあるものを作品へと通過させる創造のプロセスがあることを共有した。
最終的に目指すのは、技術を積み上げること自体ではなく、問いが生まれる身体、創造が止まらなくなる身体へと変わっていくことである。
考察
人間は自由に生きているようでいて、実際には「慣れた神経」を使い続けることで、同じ感情、同じ関係、同じ表現を繰り返しやすい。
それは安心でもあるが、同時に創造性を閉じ込める檻にもなる。
芸事において重要なのは、既に知っていることを上手に再現することではなく、その固定化した回路の外へ出て、自分にも予測できないものが立ち上がる条件をつくることである。
合同稽古とは、そのための安全な非日常であり、身体を通して無意識の深層に触れ、人生そのものを表現へと統合していく実践の場である。
自分の作品とは、上手く作ろうとして作るものではなく、自分の身体・欲求・未完了・必然性が統合される過程の中で、結果として立ち現れてくるものなのだと思う。
本稽古で共有している主な観点
Ⅰ.導入ワーク
・目を瞑って演奏できますか?
・演奏とは、頭で理解しているだけではなく、身体の中に楽器や動作の地図があることが前提になる
・思った通りに身体が動くかどうかが、表現以前の土台になる
Ⅱ.合同稽古の意義
・まず大切なのは「自分の能力を最大限発揮できる身体」を取り戻すこと
・その中心にあるのは「思った通りに体が動かせる」という無意識の土台である
・不器用、癖、ぎこちなさ、過剰さを減らし、より自由に動ける身体を目指す
・できれば、単に動けるだけではなく、美しく、優雅に動作したい
Ⅲ.身体と無意識の理解
・無意識は、脳・神経学、神経と筋肉、感情・情動、反射・癖の解除といった領域と関わっている
・身心一如:心と身体は一つであり、身体は誤魔化せない
・他人からは身体を通して心がよく見える
・心から身体へも、身体から心へもアプローチできる
・合同稽古ではその両方から働きかける
Ⅳ.人間は馴染みのある神経を使う
・人は、身体の神経回路、感情、思考、人との関係、芸事まで含めて、馴染みのある神経を使おうとする
・神経可塑性(neuroplasticity):使えば使うほど神経回路は太くなる
・その結果、繰り返したものは自動化され、無意識化され、反射のようになる
・子どもの頃に慣れたストロークを得るように、大人になっても同じ関係や反応を無意識に再現しやすい
・それは、正しいからではなく、その神経を使うのに慣れているからである
Ⅴ.人間関係・芸・マンネリ化
・日頃、人間関係で感じていることも、生育歴の中で慣れた神経回路を使っているだけの可能性が高い
・芸においても、弾き方、身体の使い方、音の出し方、演奏パターンは、数年経つといつもと同じになりやすい
・これが芸のマンネリ化である
・人はそれぞれ、自分の神経がつくった世界、すなわち環世界の中で生きている
Ⅵ.環世界の外に出るために必要なもの
・固定化した回路から抜け出すには、「偶然」と「他者」が必要になる
・そしてそれを支えるのが「場」である
・合同稽古は、ある種「神経回路を書き換える場」として位置づけられる
Ⅶ.身体の前提づくり
・自分の作品を創る前提として、まず「自分の能力を最大限発揮できる身体」が必要である
・三つの必須の訓練
・目的は、身体のブロックの解除、反射の解除である
・原始反射解除も重要な観点として扱う
Ⅷ.率直な自分を取り戻す
・自分が何を感じているのか
・自分が何を欲しているのか
・それがわからなくなっている状態から、率直な自分を取り戻していく
・そのうえで、自らの必然性と統合されていくことが重要になる
Ⅸ.自分の作品の創り方
・(A)自分が本当にやりたいことをやる
・(B)自分の未完了の何かを作品に込める
・(C)自分の環世界の外に出る(いつもの神経を使わない)
・(D)人間界の外に行ってみる(人間業とは思えない領域)
・(E)自分に何かを通過させる/降ろしてくる
Ⅹ.才能と創造性のプロセス
・(1)作品制作を決意する
・(2)本当の課題を見出す
・(3)取り組む
・(4)渾身の一撃を表現する/生じる
・(5)自分に何かが統合される
・何かが統合されると、次の課題が「あちら側」からやってくる
・これが問いが生まれるということである
Ⅺ.最終的に目指すこと
・問いが生まれる身体の出来上がり
・そうなると、創造のプロセスを止めたくなくなる
・振り返ってみると、結果として自分の才能が発揮され、創造性が発揮されていた自分に気づく
・つまり、人生そのものが表現として統合されていく
※個人や具体的状況に関わる記述は公開していません。 稽古の学びを抽象化し、問いとして共有しています。
※合同稽古は、信頼関係を前提とした少人数の実践の場です。 内容の詳細やワークの手順は、場の中でのみ共有されます。
初公開:2026-03-16 / 最終更新:2026-03-16