問いの集約
基準音と音律──三味線奏者のための音楽基礎(後編)
三味線奏者のための基礎講座・後編として、基準音と音律、そして「どの高さの音を使うか」をどう選ぶかを整理しながら、演奏者が押さえておきたい最低限の音楽用語(メロディ・リズム・ハーモニー)について解説しています。チューナー任せにせず、自分と聴き手の感覚を手がかりに音の高さを選ぶ視点を提案する内容です。
講座紹介(概要)
本動画は「三味線奏者のための基礎知識(後編)」として、基準音・音律・音の高さの選択、そして演奏者が身につけるべき最低限の音楽概念について解説します。まず、基準音は絶対ではなく、国・時代・楽団・環境によって異なることが示されます。ラ=440Hzは一例にすぎず、444Hzや415Hzなど幅が存在します。さらに、音の周波数の決まり方には平均律・純正律・ピタゴラス音律・三分損益法など複数の体系があり、どれも一義的な正解ではありません。重要なのは「どの音の高さを選ぶか」を演奏者自身が感覚的に判断し、聴衆との接点として磨いていくプロセスであると説きます。これは「守・破・離」の道筋と結びつき、基準に従う段階から、基準を離れ、未知に向き合う段階へ進むための基礎力として機能します。終盤では、音楽の三要素(メロディ・リズム・ハーモニー)を整理しつつ、日本の伝統音楽における独自の音の在り方との対比が提示され、基礎知識を土台として今後の探究へ進むための導入として位置づけられています。
この講義で立ち上がった問い
- ・基準音は何か──ラ=440Hzを絶対とみなさず、「基準」とはそもそも何を意味するのか。
- ・平均律・純正律・ピタゴラス音律・三分損益法など、音律の違いは三味線の音色と表現にどのような影響を与えるのか。
- ・人や時代によって異なる「使う音の高さ」の中で、演奏者は何をよりどころに音を選ぶべきなのか。
- ・守→破→離のプロセスにおいて、音楽の基礎知識はどのように機能し、「分からなさ」とどう付き合うのか。
- ・メロディ・リズム・ハーモニーという西洋的枠組みと、日本の伝統音楽における〈音色・間・ネ〉の感覚は、どのように交わり、どこが異なるのか。
内容の記録
Ⅰ.格言「調弦3年、ツボ8年」とは
・「調弦3年、ツボ8年」という言葉が示す、音を合わせる・音を扱うことの重さ
・単に「音を出す」ことと、「音を選ぶ・コントロールする」ことの違いに触れる導入部
Ⅱ.基準音と音律の基礎
・基準音(標準音)とは何か──ラ=440Hzを中心とした現在の慣習
・440〜444Hz、歴史的には415Hzなど、基準音の揺らぎとその背景
・基準音をもとに各音階の周波数が決まる仕組み
・平均律・純正律・ピタゴラス音律・三分損益法といった音律の概要
・三味線用チューナーや調子笛が平均律を前提としていること
Ⅲ.「どの高さの音を使うか」をどう決めるか
・国・文化・教育・演奏ジャンルによって「馴染みのある高さ」が変わること
・時代や演奏シーンによって求められる音の高さが異なるという視点
・先生や伝承、文献、音楽理論を基準にする立場がある一方で、「自分と聴き手の感覚」を基準とする発想の提案
・共和音/不協和音の判別を含め、自分と楽器にとって適した音の高さを感覚的に選ぶ技術の重要性
Ⅳ.基礎知識と「守・破・離」
・基礎知識を身につけることは、「何が分かり、何が分からないか」を知ることでもあるという視点
・未熟な段階では、共通の基準に従い「守る」ことの大切さ
・熟達とは、基準から一度離れ、「答えのない領域」を前提に歩むこと
・三味線にはフレットがなく、毎回自分で調弦し、一音一音の高さを決めていく必要があること
Ⅴ.音楽の三要素と日本的な音の感覚
・音楽の三要素:メロディ(旋律)、リズム(律動)、ハーモニー(和声)のごく基本的な整理
・コードとハーモニーの概念、三味線単体での扱われ方
・西洋音楽的な枠組みだけでなく、「音色の複雑さ」「間」「一音の表情」を重んじる日本的な音楽観との対比
・今後の続編(音の使い方・音色編)へとつながる導入としての位置づけ
※個人や具体的な事例に関する内容は公開していません。学びを抽象化し、共有可能な知として整理しています。
初公開:2024-06-28 / 最終更新:2026-01-08