音楽の基礎知識(3) 音色編|倍音・協和音・不協和音──三味線からノイズを抜くと何が残るか

本動画は「音色とは何か」を、三味線の実例とデジタル処理による聴き比べで整理する講義です。 音名周波数(ドレミの高さ)だけを強調すると、三味線は「何の楽器か分からない音」へと近づきます。 逆に、音名以外の成分(整数次倍音・複雑な倍音・雑音)こそが、楽器の個性=三味線らしさを立ち上げる。 倍音の基礎、協和音/不協和音の考え方、ピアノとの比較を通して、 サワリ・胴・駒・撥・皮が生み出す「雑味のバランス」を、耳と理解の両方で掴むための導入です。

講座紹介(概要)

まず、デジタル技術を用いて「音名周波数のみを強調した三味線の音」を提示し、 音名(高さ)だけでは楽器の正体が薄れることを体験的に示します。 続いて、三味線の周波数成分を「音名周波数」「整数次倍音」「複雑な倍音(非整数倍音や雑音を含む)」の三層に分け、 音色の中心が音名そのものではなく「それ以外の音」にあることを整理します。 倍音は弦楽器に必ず伴う現象であり、複数音が重なると和音となる。 その和音が調和して聴こえるものを協和音、調和しないと感じるものを不協和音として捉えます。 ピアノが協和音中心に設計された「ピュアさ」の方向を持つのに対し、 三味線は不協和音や雑音を含み込むことで成立する楽器である点が強調されます。 音名を追いかけすぎれば個性を失い、逆に雑音を増やせば下品にもなる── その間にある「文化的に許容される適度な領域」を、自分の感受性で探すことが本講の主題です。

この講義で立ち上がった問い

内容の記録

Ⅰ.導入:音名周波数だけの音色を聴く

・前提:音色編(前回)を踏まえ、今回は「倍音/協和・不協和」へ進む

・デジタル処理で、音名周波数(運命の各周波数)のみを強調した三味線音を提示

・結果:ほとんど楽器名が分からない音になり、「三味線らしさ」が消える

Ⅱ.結論の提示:三味線らしい音色は「音名以外の音」

・音名周波数のみ/音名以外のみ、を分離して聴き比べる

・楽器の個性(音色)=ドレミの高さそのものではなく、それ以外の成分に宿る

・この知識が、音色探求の出発点になる

Ⅲ.三味線の周波数構造:三層への分解

・三味線の音は、音名周波数・整数次倍音・複雑な倍音(非整数倍音・雑音)に分けて考えられる

・音名以外の成分が非常に多く、周波数構成が複雑であることが特徴

Ⅳ.倍音の基礎

・弦は基音だけでなく、2倍・3倍・4倍…の倍数の音を同時に発生させ、合成された音として鳴る

・これを整数次倍音(正整数倍音)として整理

Ⅴ.協和音と不協和音:耳の感じ方として整理

・複数の音が重なったものを和音として捉える

・完全8度(周波数2倍)、完全5度、完全4度など、協和音として扱われる組み合わせの例示

・重要点:理屈だけでなく、合成された音が調和していると感じれば協和、調和しないと感じれば不協和

・弦楽器は倍音を必ず含むため、「楽器それ自体が特定の和音を発生させる」と捉えることもできる

Ⅵ.ピアノと三味線の比較:ピュアさと複雑さ

・同じ弦楽器でも、ピアノは多くが協和音で構成される方向へ設計されている

・三味線は協和音だけでなく、不協和音・雑音を意図的に統合していると捉えられる

・両者の差を生む鍵が「雑音(複雑な倍音/非整数倍音)」

Ⅶ.三味線らしい音色の生成要因:サワリ・胴・駒・撥・皮

・サワリ:弦の振動をあえて崩し、雑音成分を生む機能

・胴・皮:駒を通じて振動が伝わり、複雑な反響と「裏の響き」が生まれる

・撥:弦に触れる瞬間の擦過音(チ、ギ、キ…)が、立ち上がりの個性になる

Ⅷ.文化的な「許容領域」:雑音は多ければ良いのか

・日本の楽器には複雑な倍音や雑音を含むものが多いという指摘

・自然音(例:鈴虫)への親しみ、人工性と自然性を切り離しすぎない美意識

・ただし、雑音を増やしすぎると下品にも感じられる(例:サワリ過多/腕力でのスポーツ化)

・音色には「文化的に許容される適度な領域」があり、絶対解はない

Ⅸ.結び:自分の心地よい音色を見出し、接点を育てる

・現代にできること:自分にとって心地よい音色バランスを見出す

・自分の音色と他者・環境との接点を長い年月で探す

・一音に美を求め、一音に魂が宿る──メロディ以前に「音色の力」がある

※個人や具体的な事例に関する内容は公開していません。学びを抽象化し、共有可能な知として整理しています。

初公開:2024-09-01 / 最終更新:2026-01-28