その腹式呼吸は間違っています──腹筋ではなく「呼吸量」と縦の連動を取り戻す

「腹式呼吸=お腹を出し入れして鍛えるもの」と思い込んでいる人は多いですが、 そのやり方はしばしば筋トレ化(固め)を招き、声の振動が身体に伝わりにくくなります。 本回は、腹式呼吸の本質を「腹筋操作」ではなく肺に入る息の量(呼吸量)として捉え直し、 横隔膜・内臓・骨盤底筋・足裏が縦につながる全体性を回復する方向を提示します。

和の発声法における呼吸は、部分を操作して「作る」のではなく、 土台(足裏)から連動が戻った結果として自然に深くなる──という立場です。

この回で共有した問い

内容概要

本回は「腹式呼吸の誤解」を起点に、和の発声法における呼吸の考え方を整理する。 腹式呼吸は腹筋を鍛える行為ではなく、肺に入る息の量(呼吸量)を増やすことが核心である。 お腹を意図的に出し引きする呼吸は筋トレ化しやすく、全身の緊張(固め)を生み、 声帯を含む身体の可動性と振動伝達を阻害しやすい。 呼吸の実体は「肺に息が入る→横隔膜が下がる→内臓が押され腹部が前に見える」という縦の連動であり、 さらに骨盤底筋・足裏まで連動が広がると、呼吸と発声の全体性が回復していく。 そのための優先順位は、腹部の部分操作ではなく、足裏の土台と骨盤底筋・横隔膜の連動を整えることにある。 結論として、横の動き(分断)ではなく縦の連動を取り戻すことが、深い呼吸と喉を守る発声の入口になる。

まとめ

呼吸を「うまくやろう」とするほど、身体は部分を操作し、全体の連動を失いやすい。 和の発声法が示すのは、獲得よりも回復であり、鍛えるよりも妨げを減らす方向である。 声は喉の成果ではなく、土台から縦に通った身体が自然に鳴る結果として立ち上がる。 つまり呼吸とは、技術で作るものではなく、全体性が戻ったときに“起きてくる現象”でもある。

内容の記録

0.導入:腹式呼吸の誤解をほどく

・腹式呼吸=「お腹を出し入れして鍛える」と誤解されやすい

・本質は腹筋操作ではなく「呼吸量(肺に入る息の量)」

1.腹式呼吸の勘違い(筋トレ化)

・腹部を意図的に出し引きすると、苦しくなりやすい

・腹筋を使っている“気”になるが、全身が固まりやすい

2.固めてはいけない:振動が伝わらない

・固い状態は声帯を含む全身に緊張を波及させる

・声は振動で生じるため、固まると振動伝達が阻害される

3.解説:呼吸と骨格(縦の連動)

・息は肺に入る → 横隔膜が下がる → 内臓が押され腹部が前に見える

・横隔膜の動きは骨盤底筋・足裏の感覚とも連動しうる

4.和の発声法の呼吸:実演(全体性)

・頬骨/喉/肺/横隔膜/内臓/骨盤底筋/足裏が一体で動く感覚を作る

・部分を操作するのではなく、土台から連動が戻る方向へ

5.伝統芸能にとって重要な足裏の感覚

・「地に足をつける」:足裏が安定すると縦の連動が途切れにくい

・土台ができると、息が深く入りやすく、上半身が緩みやすい

6.結び:横の動きがエネルギーを分断する

・横方向の固め(分断)が、息・声・身体の流れを止めやすい

・縦の連動(足→骨盤底筋→横隔膜→喉)を回復することが入口

初公開(動画公開):2023-02-03 / 最終更新:2026-02-23