三味線演奏の聴き分け方2(後編)|頭で弾く人の見極め・深い自己表現・芸術と芸術“風”

どうしたら達人を見分けられるのか──よくある質問に答える形で、 「頭で考えて演奏する人の見極め方」「深い自己表現/浅い自己表現」「芸術と芸術“風”の違い」を整理します。 見分けの入口は意外に単純で、人の重心に現れます。 頭で弾く人は重心が上がりやすく、同期して観ると「相手を操作したい」「勝ちたい」「評価から逃げたい」という動きが身体感覚として読める。 一方、深い自己表現は“表現しようとする”作為ではなく、今この瞬間に生じてしまう真の自発性として立ち上がります。 後編では、その差がなぜ音と所作に出るのか、そして本物の芸術が鑑賞者を変えてしまう理由まで踏み込みます。

講座紹介(概要)

本動画は「演奏の聴き分け方」シリーズ後編として、達人の見分け方を“評価語”ではなく 身体感覚・意識状態・生成の質から捉え直す解説です。 まず、頭で考えて演奏する人は重心が上がり、演奏の基準が「受ける」「勝つ」「恥をかかない」へ寄りやすい。 その結果、魂がないと感じられたり、相手を操作しようとしたり、必要以上に肩書きを語ったり、 意味不明な抽象語で評価対象から逃げる傾向が現れます。 次に「自己表現」には浅いものと深いものがあり、浅い自己表現は“我(承認欲求)”が出ることで作為的になり、 幼さや未熟さとして見えやすい。一方、深い自己表現は真の自発性であり、表現するのではなく表出/生成として 今この瞬間に生じてしまうものです。 さらに、芸術と芸術“風”の差は「分からなさ」そのものではなく、分からないのに身体反応が立つか、 意識が変容するかという点にあると整理されます。 結びとして、中級者は“分かっちゃう”範囲で語れるが、熟達者ほど分からないことが増え、 それでも惹きつける──という逆説が提示されます。

この講義で立ち上がった問い

内容の記録

Ⅰ.よくある質問:達人をどう見分けるか

・よくある質問3つに答える形で、聴き分けの後編(見極めの実践)を扱う

Ⅱ.Q4:頭で演奏する人をどう見分けるか → 重心でわかる

・頭で弾く人は重心が上がりやすい(頭に重心がある)

・同期して観ると、自分の身体感覚に「頭でやっている」感触が返ってくる

Ⅲ.頭で考えて演奏する人の特徴

・「魂がない」と言われやすい(ショッキングだが違和感として共有される)

・相手を操作しようとする(感動させたい/喜ばせたい=承認欲求)

・勝敗にこだわる(音楽のスポーツ化/答え合わせの志向)

・抽象的な表現でかわす(意味不明にして評価対象から逃げる)

Ⅳ.よくある要望:「自己表現」を解説してほしい

・自己表現は曖昧な言葉で、浅いものと深いものがある

Ⅴ.浅い自己表現:我が出る(承認欲求・作為)

・「私を表現したい」が前面に出ると作為的になり、幼さ・未熟さとして見えやすい

・エンタメ文脈では成立する場合もあるが、深い意味での表出とは別物として整理される

Ⅵ.深い自己表現:真の自発性(表現するのではない)

・深い自己表現は「生じる/表出する/生まれる」方向であり、止めなければ出てきてしまう

・解釈(頭)を挟まず、純粋に感じたものが今この瞬間に立ち上がる訓練が必要

・必要条件:自分の感情の器を大きくし、他者の行為を事実として見られるようにする

・深い自己表現は普遍性を帯びるほど他者に共感され、身体内部にも響く

・「今こここの瞬間」以外(過去の穴埋め/未来の報酬)に頭が飛ぶと深さは立ち上がりにくい

Ⅶ.芸術と芸術“風”の違い

・芸術は再現性のない生成として現れ、鑑賞者の意識状態が変わる(自分の中で何かが動く)

・「分からない」のに身体反応が立つ、ずっと聴いていられる、身を重ねても人間界の外にある──が手がかりになる

・一方で「分からない」のに身体反応がないものは、単に支離滅裂・抽象に逃げただけの可能性がある

・有名・著名は関係ない(ハロー効果に注意)

Ⅷ.中級者と熟達者の違い

・中級者は「分かっちゃう」範囲で語れる(How-toが出せる)

・熟達者ほど「分からないこと」が増えるが、その分だけ最前線へ進んでいる

・芸術をやっているかのポイントは「自分にとって分からないこと」を演奏しているかどうか

Ⅸ.技術偏重への警告(スキル倒れ)

・技術は必要だが、技術に寄りすぎると“スキル倒れ”になり、違和感が出る

・「上手い」と言われる地点の先に、癖になる演奏(惹きつける)がある、という射程が示される

※注意:本ページで扱う「芸術/芸術風」「本物/偽物」は、権威や肩書きではなく、 身体反応・同期のしにくさ・意識状態の変化といった観点から整理しています。 また「頭で弾く」こと自体を断罪する意図ではなく、深い表出との方向性の違いとして説明しています。

初公開:2024-11-01 / 最終更新:2026-02-26