問いの集約
解説「自分の音色」──心に響く演奏とは(2) 三味線との出会いと楽器の選び方
スペックや評判で選んだはずなのに、なぜか「何かがおかしい」「これでいいのか」とモヤモヤが残る──。 三味線選びでは、この違和感が放置されやすく、本人も“悩んでいることすら気づかない”ことがあります。 本回は、「自分の音色」とは何かを軸に、頭が求める音(数値化・コントロールしやすい音)と、 心と身体が求める音(快・不快として先に反応する音)の違いを整理します。 そして、試奏や出会いの場で起きる身体反応(呼吸・姿勢・表情)を手がかりに、 長期的に嘘のない音色へ近づくための判断軸を提示します。
この回で共有した問い
- ・スペックで選んだ三味線が「心に響かない」のは、何が起きているのか。
- ・「違和感」「モヤモヤ」は、何を知らせるシグナルなのか。
- ・頭が求める音と、心と身体が求める音は、なぜズレるのか。
- ・「自分の音色」は、どうすれば見分けられるのか(試奏・身体反応)。
- ・音楽経験が長いほど「心に響く」が分からなくなる場合があるのはなぜか。
- ・「必然性のある音色(出会い)」とは何か。どういう変化として現れるのか。
- ・自分をごまかしている状態は、なぜ他者の心に響きにくいのか。
- ・起きるべきことが起きる、とは何を指しているのか(コントロールの限界)。
定義(このページで言う「自分の音色」)
このページで言う「自分の音色」とは、 頭で作った正解ではなく、心と身体が先に反応する音色(快・不快/呼吸・姿勢・表情の変化として現れる)を指します。 そして他者の心に響くとは、その状態での演奏が結果として嘘なく伝わる、という意味です。
要点(TL;DR)
- 何が問題か:スペックや評判で選ぶと、長期的に「何か違う」という違和感が残りやすい。
- なぜ起きるか:頭が求める音(数値化・制御)と、心身が求める音(快・不快の反応)はズレることが多い。
- どうするか:試奏し、呼吸・姿勢・表情・弾きたさといった身体反応を手がかりに「必然性のある音色」を見分ける。
内容概要
本動画は「心に響く演奏」の条件を、「自分の音色」という観点から整理する。 まず、一定数存在する「頭で選ぶ人」を取り上げ、細棹/中棹/太棹、正寸/短棹、材(花梨・紫檀・紅木・金細等)、 構造(三つ折・延べ棹)や胴、皮といった“スペック”だけで意思決定する傾向を示す。 和楽器には試奏・試聴なしで購入する商習慣もあり、その結果「買ったはずなのに何かがおかしい」という買い替え相談が起きる。 次に、違和感やモヤモヤは“言葉になる前のシグナル”として現れやすく、頭で選んだものは心身に響きにくい点を指摘する。 「自分の音色かどうか」を知る手がかりはインターネット情報ではなく、心と体の反応にあると述べる。 頭は分解・数値化・制御により安心を得るため、音の大きさや明瞭さ、音程の取りやすさなど判断しやすい要素を“良い音”と誤認しやすい。 しかし心身が求める音は、快・不快として思考以前に反応し、心地よさや必然性として立ち上がる。 後半では「必然性」を扱い、試奏で呼吸・姿勢・表情が変わる、感情が揺れる、「これしかない」と確信する等の現象を紹介する。 結論として、自分をごまかさず自分の音色で稽古・演奏するほど、結果として他者の心にも深く響く体験が積み重なる、とまとめる。
結論:「自分の音色」は心身が先に知っている反応として現れ、嘘のない音色で稽古・演奏するほど、結果として他者にも深く響きやすい。
実践チェックリスト(試奏で見るポイント)
- 呼吸:音を聴いた瞬間に呼吸が浅くなる/止まるか、自然に深くなるか。
- 姿勢:身体が固まるか、力が抜けて立ち上がる(芯が通る)感覚が出るか。
- 耳と疲労:数分で耳が詰まる・疲れるか、聴き続けても不快が増えないか。
- 弾きたさ:「もっと触りたい」「ずっと弾けそう」が出るか、早く終えたくなるか。
- 余韻:音の後ろに余韻・陰影・揺らぎ(生っぽさ)が残るか、単調で硬いか。
- 心的反応:心地がいいか・嬉しくなるか・楽しくなるか。上級編:人によっては、少し怖さが出る場合もある(本質に触れたサインになり得る)。
※ポイントは「正しい音」よりも、あなたの心身がどう反応するかです。違和感は、言葉になる前の重要なシグナルとして扱ってください。
まとめ
「自分の音色」は、頭で作る正解ではなく、心身が先に知っている反応として現れる。 人は安心のために分解・比較・数値化へ寄りやすいが、そのとき最も大事な「言葉になる前の違和感」を見落としやすい。 音色の選択は好み以上に、その人の人生経験や引き受けの深度と結びつく。 必然性のある出会いでは、呼吸や姿勢、表情が変わり、怖さを伴うほど感情が揺れることもある。 だからこそ、試奏し、身体の反応を手がかりにし、コントロールではなく“整える”側へ戻る。 嘘のない状態で響く音が、結果として他者の心に響く──それが本回の結論である。
初公開:2023-01-27 / 最終更新:2026-02-09