1.三味線のメンテナンスの概要
三味線のメンテナンスの概要は以下に説明します。
主なメンテナンス箇所は主に棹(かんべり、ヒビ、割れ)、皮、糸巻き、糸、撥、駒です。
それ以外にも福林(ふくりん)、中子(中木、なかご)などの定期メンテナンス部位もあります。
2.三味線の本体・糸巻きのメンテナンス(糸巻き、棹、中子、上駒、糸巻きの金具)
三味線本体のメンテナンスに必要なのは、主に「糸巻き」「棹」「接合部の外れ」です。
・「糸巻き」
糸巻きの材質にもよりますが、使用して数年で糸巻きでの調弦がゆるくなる場合があります。
この場合、糸巻きの調整が必要です。
また、糸巻きをぶつけて折ってしまう場合があります。この場合は交換が必要です。
・「棹」
良い材で正しく糸を抑えることができれば、三味線の棹が消耗することはほとんどあまりありません。
しかし、爪で棹を削る、柔らかい棹を使用している場合、棹が削れる場合があります。この場合修繕が必要です。
また、棹をぶつけたり、落としたりして折ってしまう場合があります。この場合は修理で大抵直りますが、ひどい場合は交換が必要です。
・「接合部の外れ」
「中子」「上駒」「糸巻きの金具」「上の棹と乳袋部分」は数年使用していると外れることがあります
簡単なメンテナンスで修理できます。
3.三味線の皮のメンテナンス
三味線の皮は定期的にメンテナンスが必要です。
皮の種類、張り方、演奏ジャンル、使用方法によりますが2〜5年で変える方と破れるまで変えない方のふた通りが主流です。
・「皮が破れた時」
三味線の皮は劣化すると破れます。破れた場合は交換するしかありません。
・「皮がずれた時」
水分や劣化が原因で皮が胴からずれることがあります。
この場合裏の皮であれば応急処置で延命できることもあります。
表の皮は音が大きく変化してしまうので、交換することが必要です。
・「音色に変化があった時」
主にに劣化が原因で「音が下がる」「響かなくなった」と感じるタイミングがあります。この場合交換が必要です。
・「合成皮の壊れ方」
合成皮三味線がメンテナンスフリーだと勘違いしている人もいらっしゃいますが天然皮と同様故障したらメンテナンスが必要です。
参考:合成皮三味線の壊れ方
4.糸(弦)のメンテナンス
弦の素材の主流は「絹」で、2の弦と3の弦には人工素材の「テトロン」「ナイロン」が併用されています。
三味線の糸も定期的な交換が必要です。
演奏ジャンル、演奏方法、使用する糸により異なります。3の糸(絹)だと毎日交換する人もいますし、1の糸は2,3ヶ月使用する人もいます。
最初は師匠に相談しながら、徐々に自分にあった交換タイミングを見つけ出しましょう。
・「切れる」
劣化が進むと切れる場合があります。この場合交換です。
劣化以外にも、駒が鋭敏で切れる、調弦で引っ張りすぎて切れる、自分の爪で切れる場合もあります。
駒が原因の場合は、該当場所を少しヤスリなどで丸めるか、購入店にお願いしましょう。
・「音色が変化」
主にに劣化が原因で「音が下がる」「響かなくなった」と感じるタイミングがあります。この場合交換が必要です。
・糸は変えても馴染むのに時間がかかる
糸は交換しても、馴染むのに時間がかかります。 演奏がある場合には余裕を持って交換しましょう。
5.三味線の撥・駒のメンテナンス
・撥のメンテナンス
撥先が丸くなりすぎたり、欠けたりしたらメンテナンスが必要です。
鼈甲は程度によってはつけたしが可能です。また、放置していると虫食いをする場合があります。ご注意ください。
参考:鼈甲撥の虫食い
・駒のメンテナンス
基本的に割れたり、溝が深くなったら交換です。形状の変化による微調整などはメンテナンスで修繕できます。
6.三萃園の三味線のメンテナンス・維持修繕 費用
当店はメンテナンス中には三味線は無料で貸し出しています(ご来店の方限定)。
部位 |
項目 |
価格(円) |
納期 |
備考 |
三味線 |
勘減り |
33000〜44000 |
3〜4週間 |
状態次第 |
|
糸巻き交換 |
6000〜 |
1〜2週間 |
1本あたり 材質次第 |
|
糸巻き修理 |
2000〜6000 |
1〜2週間 |
1本あたり 材質次第 |
|
中子の外れ |
4000 |
1週間 |
|
|
福林の外れ |
3000〜4000 |
1週間 |
|
|
胴割れ |
22000 |
2〜3週間 |
|
|
クリーニング |
11000 |
60分〜1週間 |
本体汚れとりと金具さびとり |
|
コーティング |
22000〜 |
4週間 |
|
|
棹のヒビ、割れ |
22000〜 |
4週間 |
|
皮張り替え |
細棹 両面 |
44000〜 |
2〜4 週間 |
大きな胴は+5000円 |
|
中棹 両面 |
44000〜 |
↑ |
大きな胴は+5000円 |
|
太棹 両面 |
66000〜 |
↑ |
|
|
細棹 表のみ |
33000〜 |
↑ |
大きな胴は+4000円 |
|
中棹 表のみ |
33000〜 |
↑ |
大きな胴は+4000円 |
|
太棹 表のみ |
46000〜 |
↑ |
|
|
細棹 裏のみ |
22000〜 |
↑ |
大きな胴は+4000円 |
|
中棹 裏のみ |
22000〜 |
↑ |
大きな胴は+4000円 |
|
太棹 裏のみ |
35000〜 |
↑ |
|
糸 |
細棹 セット |
800〜 |
5分 |
1の糸、2の糸、3の糸のセット |
|
中棹 セット |
800〜 |
5分 |
↑ |
|
太棹 セット |
1000〜 |
5分 |
↑ |
撥 |
消耗、欠けの修理 |
3000〜20000 |
20分〜1週間 |
状態次第 |
フルメンテ |
フルメンテナンス |
66000〜 |
4〜6週間 |
使っていない三味線の再生 |
その他費用:当店で三味線を購入されていない方は相談料5,000円いただく場合があります(メンテナンス費用が5,000円を超える場合は不要です)。
7.お問い合わせ方法
お気軽にメール「info_s@shamisen.ne.jp」かFAX「0566-91-7535」に連絡ください。
タイトルに「メンテナンス相談」と題しまして、内容に以下を記載ください。
【内容にご記入いただきたいこと】
・ご氏名
・郵便番号
・住所
・電話番号
・三味線歴
・三味線演奏ジャンル
・ご希望のメンテナンスについてのお問い合わせ
ご紹介 思い出深いメンテナンス 1 (中棹紅木)
ある時、珍しい依頼がありました
依頼者のお父様が演奏していた三味線を家の中で発見したとのこと。
お父様は数年前に亡くなっていました。
このため、10年以上メンテナンスされておらず、三味線は演奏できる状態ではありませんでした。
一ヶ月ほどかけて相談したところ、
手放すのではなく、修繕して三味線普及する活動に利用してほしいとのことでした。
当初、高級車が買えるくらいの値段だったと思われる良い三味線でしたので、
修繕はより慎重に行いました。
修繕が終わる頃、依頼者宅の仏壇の前でこの三味線を演奏させていただくことにしました。
そして納入の日、私は奏者とともに、依頼者宅を訪問させていただき、お父様の思い出の曲を演奏させていただきました。
現在は若手の奏者に時々貸し出され、再び活躍してます。
思い出深いメンテナンス2 (細棹紅木)
上述のご依頼にはもうひとつありました。
先代の方は中棹三味線2丁と細棹三味線をお持ちでした。
中棹で民謡や津軽三味線、細棹で小唄や端唄を演奏されたいたようです。
本当に熱心に練習されたいたようで、ところどころに大切に利用されていた証がありました。
三味線がどのように使われていたかは、専門家が見れば一瞬でわかります。
ぜひ、自分に合った三味線を大切に使ってほしいと考えています。
この三味線も若手の奏者の方に貸し出され、新たな活躍をしています。