三味線の皮について
三味線の皮は音色にとって大切な部位です。
主に弦の音色を増幅する役割があります。
三味線の皮は音色にとって大切な部位です。
主に弦の音色を増幅する役割があります。
本ページの内容を動画にまとめております。
三味線の胴には皮が貼られており、太鼓を形成しています。
このため太鼓と弦楽器を組み合わせた打弦楽器と呼ばれることもあります。
太鼓の必要性は弦の音を増幅することと、音色を複雑にすることにあります。
また、三味線のルーツは東洋ですので、東洋思想のある象徴が太鼓に内在化されていると言われています(動画参照)。
現在、利用されている皮は99%以上が伝統的な「天然皮」か「代替天然皮」です。
数十年前から「人工皮・合成皮」が学校の教材用に利用されていましたが、普及に至っていません。
皮は種類や質によって厚み、柔軟性、目(筋のようなもの)、不規則性などが異なります。
伝統的な三味線らしさ例えば「美しい雑味と余韻」「遠音」「音域の広さ」「複雑な倍音」「包囲性・浸透性」「心地よさ」などを求める場合には、
下図にあるような黄色のような皮を利用する必要があります。
現時点ではこれには天然皮が必要です。
伝統にはあまり興味がなく、西洋音楽や現代音楽のように三味線を演奏したい方もいるかもしれません。
それをエンタメぽさと表現すると、例えば「高音を強調」「鋭い音」「派手さ」「刺激」などを強調する音色が必要です。
下図にあるようなオレンジ色のような皮を利用する必要があります。
現時点ではこれには「分厚い天然皮を固く張る(かんばり(乾張り))」もしくは「合成皮」が必要です。
このように三味線の皮は三味線演奏ジャンル(長唄、小唄、端唄、地唄、民謡、津軽三味線・・・により異なる)、三味線の大きさ(細棹、中棹、太棹等によりことなる)、求める音色などにより皮を選択していきます。
なお、参考までに皮の厚み、硬さと音色の見解を簡単に以下にまとめておきます。
【皮と音色の簡易的な説明】
・音の大小
皮の張力 :皮を強く引っぱるほど音が振動する速度が速くなり、一瞬大きい音がでる。
・音の高低
皮の厚み :皮が薄いほど高い音が出る。
皮の張力 :皮を引っぱるほど高い音が出る。
・余韻 → 皮の素材としての硬さ
硬い皮ほど残響・余韻が短い
柔らかい皮ほど残響・余韻が長い
録音音源なので違いをお伝えするのには限界がありますのでご了承いただいた上でご利用ください。
参考:皮の種類と張り方による音色の違い
三味線の皮の張り方は音色にとってとても大切です。
三味線の個性を生かした張り方、つまり前述の三味線らしさを適切に響かせるには、一つ一つの三味線を見極めながら張る必要があります。
一方、前述のエンタメぽさを表現するのであれば、破れる限界まで皮を強く引っ張った状態で張ればその音色が作れます。
これは音を単純にして音階が合っているかを判断しやすく、競技向きとも言われています。
耐久性という観点からは強く引っ張れば引っ張るほど皮は破れやすくなります。
このように皮の張りは奏者が何を求めるか次第で方法が変わりますので、この知識を持ち、馴染みの職人さんと相談しながら自分に合った音色を構築する必要があります。
三味線の胴には両面皮が張ってあります。
裏の皮は原則、音色への大きな影響はありません(一部の演奏ジャンル、流派を除く)。
このため、破れにくい張り方をするのが経済的です。
裏の皮と音色の見解
@ 裏の皮の張り具合と音色の違い
→裏の皮の厚みや張り方を変えても大差なし
A 裏の皮がないとどんな音色になるのか
→裏の皮が無いと、音が後ろに抜ける。このため音量が小さくなる。また、共鳴が減るため、余韻が短く、単調な音色になる。
天然皮がなくなるとの誤情報を発信している人がいるようです。
この種のネットの情報に惑わされて、人工素材の三味線を購入し、のちのちに後悔をする選択(例:買い直しなどの無駄な費用がかかった、音色が嫌で挫折)をしたという方の相談を多数うけています。
天然皮の供給に関しては、現時点ではさほど心配がないと考えております(地域・流派により差がある)。
<実態>
・国内に過去の備蓄が多数眠っている。
・時代や環境に合わせ、現実的な代替案も生まれている。
・代替案は産地・種類が変わっているので、やや質の変化があるが、徐々に最適化されている。
もちろん未来永劫を保証できるわけではありませんが、少なくとも当方のお客様は当面は心配いりません。
長く伝承されてきた必然性や本質を疎かにせず、持続可能な形で三味線を後世に継承することが求められていると考えられます。
これをお読みの方には、"誤情報"に惑わされず、
正確な情報をもとに自分に合ったニーズで選択いただければと考えております。
天然皮を破れる寸前まで強く張る非伝統的な工法があります。それを「かんばり(乾張り)」といいます。
30年ほど前、競技津軽三味線の若者の一部が賞をとるために始めたことですが、一部が長唄、小唄、端唄、民謡、地唄などの伝統ジャンルに広がりました。
広がった理由は奏者が選択したわけではありません。一部の業者さんが頼まれもせずに、その工法を採用したからです。
試奏していろいろ弾き比べてそれを希望する方は問題ありませんが、自分で選択せず使用している方は違和感を抱えながら演奏しているようです。
ここでは簡単なメリット・デメリットを記載します。
かんばりのメリット
・「わかりやすい・短調な音」であるため、音の正確さや演奏の速さを競うためには向いている。
・「マイクで集音してデジタル加工し、スピーカーで増幅した音」が前提の場面には向いている(一部の舞台)。
かんばりのデメリット
・皮が破れやすい。
・伝統芸能としての三味線には不向き。
・音色上のデメリットがある「詳細」。
以上を理解した上で選択いただければよいと考えております。
三味線奏者の99%以上が天然皮の三味線です。
合成皮三味線が販売されて40年以上が経過しますが、この事実が奏者の合成皮三味線に対する評価を示しています。
ただし、化学繊維(合成皮・人工皮)を利用する取り組み自体は、選択肢の一つだと考えています。
現在 合成皮・人工皮を利用しているのはエンタメ系三味線の方か競技三味線(スポーツ的な演奏)の方の一部です。
・合成皮のメリット
「雨の日の外で使用する」「踊りで使用する」「音色の良し悪しにほあまり興味がない人」「長く・深く学ぶつもりがない人」「伝統にはあまり興味がない人」「マイクで集音し、デジタル加工をすることが前提な人」などには選択肢かもしれません。
例えば合成皮の種類次第ではありますが、三味線でエンタメを中心に演奏したいという方、強い刺激を求めている人は合成皮が向いている場合があります。
・合成皮のデメリット
「音色」:音色に関しては、昔より改善されてきていますが、決定的な難点がいつくかあります。
合成皮の種類次第ではありますが、「強すぎる刺激」「音域の狭さ」「音の単調さ」「余韻の減少」などです。これは試奏をしてみると一聴瞭然です。
音以外の観点では、例えば「耳が育たないこと(聴く能力が育たない)」こと、「手首を痛める人がいる」ことや「挫折する人が多い」こと、
「メンテナンスフリーと宣伝されているが、実際はそうではない」「購入者の多くが間も無く伝統的な天然工法の三味線を購入し直す」ことなどは表面化することが少ない情報でしょう。
このような知識を踏まえた上で自分に合った選択をしてください。
・皮の厚みと音色
・裏の皮がないとどんな音になるのか
・かんばり(乾張り)に対する現時点の評価(当店の見解と奏者、観客の感想)
・人工皮(合成皮)に対する現時点の評価(当店の見解と奏者、観客の感想)
・伝統工法、機械大量生産:「人工素材」「機械製」「均質(みんな同じ)」「効率重視」
本ページでは音色を説明する言葉「余韻」が何度も出てきました。
「美意識」「音色の探求」に簡単にまとめてあるので参考にしてください。
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