三味線?あのうるさい楽器ね("一部の三味線"への感想)
ある外国人の民族音楽家との会話です。
「三味線?あのうるさい楽器ね」
ストレートにこのように表現しました。
なぜそう感じたのか聞いてみると
「キンキン、カンカンと皮の音が痛い」「刺してくるような音で気分が悪くなる」「深みが・・・」
と手厳しいものでした。
どんな三味線を聞いたことがあるのか尋ねると
「若手演奏家さん」と「伝統と言われているある演奏ジャンル」の海外公演でした。
目次
「うるさい」この感想は実は日本人も多い
実は日本人も同様です。
聞き手は黙ってはいますが、"一部の三味線" に対してこのような感想があります。
「痛い」 「うるさい」 「誰が弾いても同じ音色」 「一曲でお腹いっぱい」 「ロックみたい」
「品が良くない」「パチンコ店のような騒々しさ」「最初は惹きつけられるが疲れる」「深みが無い」・・・
(試奏をするとどんな反応なのか)
奏者が"一部の三味線"を試奏した場合以下のような反応をします。
瞬間的に顔がひきつり「痛い」「うるさい」「気分が悪くなる」「呼吸が止まる」「体が固まる」。
あるプロの三味線講師は「簡単に音が出るので本質的な上達を妨げる」「硬すぎるので手首を痛める」「耳が悪くなる(難聴含む)」と。
"一部の三味線"とはどんな三味線なのでしょうか?
「西洋化/競技化した音色」
最大の原因は三味線の音色を「西洋化/競技化した」ためです。
西洋化/競技化した音色の三味線は単純化すると「協和音」「高音」「鋭さ」「迫力」を優先しています。
一言で単純に表現すると「わかりやすい音色」にすることです。
「派手な高音が好きな方」「競技がしたい方」「芸能に興味がない方」「一般的に若い方」に向いています。
【この音色の背景】
明治維新以降は西洋音楽が流行りました。現代では学校教育は西洋音楽を学ぶ場です。
純邦楽も適応するため日本の楽器を西洋の楽器に似せることを無闇に実施しました。
また、それを更に加速させたのが「競技化」。音楽で人に勝つためには特定の側面を極端に強調。
この音色は戦後の高度経済成長期(30〜40年前)にピークを迎えました。
この音色を作るには機械大量生産の発想で製作した三味線「(例)合成皮三味線」でマイク集音→デジタル加工すること、
もしくは特定の皮の張り方が必要です「かんばり」。
この知識がない方は知らずにそのような楽器を使用している場合があります。
詳しく知りたい方↓
「わかりやすい音色」の弊害
前項では西洋化/競技化した音色を簡単に表現すると「わかりやすい音色」と表現しました。
ではわかりやすい音色とは何なのかを説明します。
【わかりやすい音色とは】
「音を単純にする」ことです。
【なぜ単純にするのか】
「商業的に成立させるために、わかりやすくする必要があるためです」
【単純な音とは】
主に「音を大きくすること」 「雑音・雑味を排除すること」です。
つまり商業的目的から「(表面上)音を大きくする」「雑音・雑味を排除する」ことを選択しました。
(これは前述したように、皮を破れやすくする工法「かんばり」と相性がよく、皮の張替えが頻繁に必要)
工業製品のように画一的な音色の三味線の製作には成功しましたが「(例)合成皮三味線」、
失ったことは大きいのではないでしょうか。
「もの(自然)」の音がするのが日本の楽器
古来の日本の楽器が大切にしている「雑音・雑味」と「自然との調和」について解説します。
西洋の弦楽器は「ノイズ(雑味)を排除してピュアな音階と倍音」を追求することが一般的です。
それはそれで素晴らしい音色です。
特徴としては、楽器の「自然性」を排除しており、「自然界」には存在しない音で構成されていると言い換えることもできます。
一方、日本の古来の楽器は、わざと雑味、雑音(ノイズ)を入れてある場合が多いです。
伝統的な音色の三味線は「自然の音がする」。
この感想をいただくことがありますが、それは、楽器のなかに「自然の音」を込めてあるため当然の事だと言えます。
すべてを以下のように単純化できるとはもちろん思いませんが、
「自然は制御するも」だとする西洋文明に対して、「自然との調和を大切にする」日本古来の文化が影響しており、それが楽器の音に込められていると捉えております。
誤解を解く:「伝統的な音色」を聞いてもらう
先ほどの海外の演奏家さんに対しては、このような説明をして、
"伝統的な三味線の音色"を聞いてもらうことで、誤解がようやく解けます。
「まったく違うじゃないか」と。
どちらが正しいということではありません。
このような知識を得た上で、好みや必要性に応じて、自分に合った選択をしていただければと考えています。
参考:音色と美意識について
本ページでは音色を説明する言葉「余韻」が何度も出てきました。
「美意識」「音色の探求」に簡単にまとめてあるので参考にしてください。
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