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三味線の美意識について


古来の日本では何が美しいとされ、どんなものを積み上げてきたのかを知ることは、三味線上達にとって大切なことです。


このページでは三味線の美意識について簡単に解説します。


一音に美を求める




基本中の基本「一音に美を求める」という日本の美意識は現代の和楽器の世界ではあまり知られていないかもしれません。


「一音に神が宿る」「一音に全てを込める」「一音成仏」といった言葉もあります。

日本古来の音楽は一般的に「メロディーは単純」「ハーモニーを多用しない」という特徴があります。

その代わりに「一音一音が複雑です」。

一音に万感を込めています。

「サワリ」「余韻」「間」

一音に美を求める日本の音楽の中で三味線は構築されてきました。

 

詳細に説明すると相当量の説明が必要ですので、ここでは3つだけ簡単に説明します。

「サワリ」:調律された音色を意図的に崩す独特の美意識

「余韻(よいん)」:弦の振動の「後」や「裏」で響く、かすかで繊細な音

「間(ま)」:「静寂」「余韻」「かすかな残響」も音楽な大切な要素

これらを少し意識するだけでも三味線は違って聞こえてくるでしょう。  

甲と乙


三味線が400年親しまれてきた理由の一つを「甲」と「乙」という観点から説明します。

「甲」:(例)甲高い声、 綺麗で雑味がなく派手「きざ」「色」「華やか」
「乙」:(例)乙な声、  渋くて地味だけど上品「粋」「寂び」「雅」「味」

 

日本の伝統的な美意識は「乙」です。江戸時代は「乙」なことを美意識としていました。

近代化した明治維新後とくに戦後の日本では「甲」に偏り始めました。
このため、伝統とされる日本の音楽でも現代はほとんど「甲」的な表現が増えています。

現代では「乙」がわかる人は少数です。
このため「乙」中心だった伝統ジャンルは、後継者がいなくなり現在は伝承が難しくなっています。

「甲」と「乙」が両立できること。

それが三味線が親しまれてきた秘密なのです。

大切なのは「甲乙つけがたい」こと


三味線が長く親しまれてきた理由がここにあります。

それは「甲乙つけがたい」こと、つまり、対立する甲乙の両立です。

長く親しまれてきた三味線の音色や演奏は必ずこのようになっています。

言葉に表すと 「綺麗で」「雑味がなく」「派手な高音」も利用できると同時に(甲)、
「渋く」「地味で」「上品な」「雑味が多い」低音も利用できる(乙)。

「乙」に偏りすぎた伝統ジャンルは伝承が難しくなり、
「甲」に偏りすぎた戦後の三味線(西洋音楽っぽい)はブームが去り伝承に苦労しています。

三味線は本当に好きな人だけが嗜む楽器に


今後は日本の伝統の美意識をひっそりと内在化した「甲乙つけがたき」音色、演奏をするジャンルのみが残っていくでしょう。
 
それは、ようやく三味線が本当に好きな人だけが嗜む時代になるということです。

本記事を通じて、皆さまの聞こえ方に少しでも変化があると幸いです。

間で聴かせるとは 音色の解説「甲と乙」

00:00 日本古来の音の捉え方「甲」と「乙」
00:10 甲(こう) 甲高い 綺麗で雑味がなくて派手  「音」で空白をうめる
00:39 乙(おつ) 乙な声だね 渋くて地味だけど上品 「間」で聴かせる
01:18 甲乙つけがたい 三味線が400年親しまれてきた理由
02:05 他の和楽器 と 三味線はどうなのか
02:53 試奏をすると何が選ばれるのか
03:23 三味線選びの実態 試奏も試聴も説明もない商習慣 「甲に偏る原因」
04:05 甲に偏った二つの原因 (1)西洋化とエンタメ化 (2)大量生産
05:40 甲に偏りすぎた演奏 人にウケそうなこと
06:29 三味線にしかできないこと 対立する二事項の両立(統合)
07:46 達人の秘密 間で聴かせる 達人風の人のと違い 小手先
08:39 単なる上手の先にある世界 三味線の美意識 甲乙が幅広く表現されている 間は魔 音と間の両立こそが熟練の証 奥の深い表現

ご興味を持っていただけた方に


 三味線は400年の歴史が有り、奥が深すぎるため、美意識をお伝えするのは簡単ではありません。
 さらに美意識に興味がある方は以下をご覧ください。

 三味線の美意識

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