「年に一丁出るか出ないかの面白い三味線が仕立てられた」
そして正直「この三味線は売りたくないな」感じました。
インターネット掲載も店舗の展示も控え、しばらくともに過ごそう、そう考えていました。
翌週、遠方から上級者が訪ねてきました。
三味線歴の長い方です。独特の雰囲気がある、武士のような方です。
彼は、様々な三味線の試奏を始めると、
音色のコメント、木材の年代、木材の質、ヴィンテージの良さなど
的確に楽器の評価をしていきました。
有名な奏者や有名な先生でもこんなに的確に
三味線のことがわかる人に出会ったことがありません。
もしかしてこの三味線の良さもわかるかな、と感じたので試奏していただいたところ、
彼は「出会ってしまいました」。
私はこの三味線は彼に渡るべきだ。そう考えました。
私の内心は持つべき人に渡って嬉しい反面、大切な娘を嫁を出す父のような気持ちになり、
喪失感もあり、複雑な心境で数日を過ごしたのを覚えています。
おそらく彼なら独自の道の良きパートナーとして大いに活躍していることでしょう。