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生きている音色

 

モノは嘘をつかない。

 

“それ” はいつも 語りかけてくれている。

 

私にできることは “それ” が通過するよう、祈るように仕事に触れ続けることだ。

 

それを続けることで、ほんの一瞬、特別な突破口が開くことがある。

 

“なにか” が通過し、自分を突き動かした と。


三味線の分解図
 

自分を超えたモノ

 

自分を超えた モノ が生まれるといつも驚く。

 

作品に未知なる生命が宿り始めるからだ。

 

偶然と必然のゆらぎ。

 

テクニックに頼ると生命は吹き込まれず、作為をもつと必ず跳ね返してくる。

 

それが三味線の製作の醍醐味だ。

 

三味線の製作風景

業界の常識

 

単に効率よく販売するためにつくられた大量の三味線と道具。

 

人工素材、外国の工場、機械で製造。それを試奏もしないで購入させられる。

形だけの伝統芸能。拡大が目的の組織に愛好者は背を向け去っていく。

 

それが1970年以降の業界の常識です。

 

しかし、私は埋没することを選択しませんでした。

 

三味線制作の現場

私の修行時代

 

私の初期の仕事は自然素材と手作業による古い三味線の修復でした。

 

江戸、明治、大正、戦前の名器と呼べる一握りの本物との語り合い。

その微かな導きに耳を傾けながら、独自の技術を磨く日々。

 

もっと音色を深く理解したい。

 

作品は必ず奏者の方々に試奏いただき、

率直な意見の交わし合いを重ね、共に洞察を深めていきました。

 

「生きている音色」「自分の音色に出会うこと」

 

三味線との対話の中で確信した、大切な二つのことです。

 

 

死んでいる音

 

いかに "鳴るか”というわかりやすさが目的の三味線。

 

単に音が大きい。単調で硬い。突き刺さるような刺激。みんな同じ。

 

“死んでいる音” それは心に響きません。

 

生きている音色

 

100年前の三味線

 

古来の美意識が基盤であること。

自然素材ひとつひとつの個性を活かした手作りには生命が宿ります。

 

三味線にしか表現できない美しい雑味と余韻。

音域が広く、複雑で重厚なのに、包み込むように優しく身体に浸透する。

 

そして、一音だけで語りかける なにか があること。

 

“生きている音色” それは自分の中心へ深く深く響きます。

 

それが、生命力のある演奏につながり、自分の中から なにか があふれ出します。

 

その深さに応じて他者の奥深くに届き、痕跡が残るのです。

 

  三萃園店長 田中
 

三味線の音色の美しさ 自然の音と雑味 一音に美を表現すること



店主 プロフィール

三味線製作者

三味線 田中、三味線専門店 三萃園 代表


岐阜県生まれ。

三味線製作・販売、メンテナンス、情報提供、稽古サポート、教本製作まで幅広く対応でき、

"ここに来れば三味線のあらゆることを体験できる"と全国各地はもちろん海外にも顧客がいる。

 

エンタメ化した現代の"三味線風"の音楽とは一線を画し、

"自然素材","手作業,""古典重視"を方針に、江戸時代の三味線を修復できるほどの技術を有している。

 

オーダメイドは現在3年待ち。

 

著書に『三味線の教本』『三味線の音色の探求』『伝統芸能』『和の発声法』『三味線の教本2』

作品集コンサート『三味線音色と美意識〜今昔の音色解説と演奏〜』


作品は『TV』『CM』『演劇』にも広がるなど、三味線業界としては独自の実績を上げ続けている。