三味線の基礎や基本について
よくある相談「三味線の基礎や基本を学んだことがない」について解説しています。
よくある相談「三味線の基礎や基本を学んだことがない」について解説しています。
本ページの内容を動画にまとめました↓
現代の日本で多い指導方法を二つに集約すると
・弦の弾きかた、ツボの押さえ方はもちろん、正しい構えを身につける前に、いきなり楽譜通りに音を出すように教えられた。その後もどんどん曲を教えられるが、本当にこのままでいいのかと途方に暮れる。
もしくは
・なんの解説もなく「はい真似してください」と言われて、見よう見まねで何とかそれっぽく演奏を続ける。これでいいのかと質問しても答えてもらえない。
長年稽古に通っているが、いまだに自信を持って人に披露できる曲が一曲もない。
これらの指導方法は多くの方が心当たりがある思います。
基礎や基本をしっかりと身につけない結果は以下のような症状や状態として現れます。
身体の面では「痛める」「違和感がある」「動きが悪い」「上達しない」「無駄が多い」 「緊張が強い」 「すぐに疲れる」といったことが多く、
感情や表現では
「楽しくない」 「美しくない」「自分に何が合うかわからない」 「楽譜がないと何もできない」 「何がやりたいかわからない」「作品を創れない」「一人で演奏できない」「自分にしかできないことがわからない」という想像的な壁にも直面しがちです。
今回、基礎や基本を解説するにあたり以下の5つの観点から解説していきます。以下の5つのポイントが他人に教えられるくらい解説できるのならおおよそ基礎や基本は身についていると言っていいと考えられます。
(1)音楽の知識 調弦表の音楽的意味がわかりますか?
(2)楽器の知識 駒の位置がなぜそこなのか答えられますか?
(3)構え(形・型) 一番多いのは構えが不安定なこと(右腕だけで三味線を支えられない)
(4)深く聴く 三味線が共鳴した時の音色を聞き分けられますか?
(5)演奏の動作 基礎が身についていない典型
たとえば、調弦表にある「四本の本調子」が C–F–C である音楽的な必然性について、説明できるでしょうか?
これは、音楽の基礎中の基礎とも言える内容ですが、これまで多くの方にこの質問をしてきた中で、先生や演奏家を含めて、正しく答えられた方はごくわずかでした。
たとえば、C–F の関係は「完全四度」の協和音、
また、C–C は「完全八度(オクターブ)」の協和音です。
つまり、三味線の本調子においては、開放弦を鳴らすだけで和音が発生するように設計されているのです。
もし、この時点で意味がよくわからないという場合、
おそらく音楽の基礎知識や基本的な理論を学ばないまま演奏されている可能性があります。
そのほかにも音楽の基礎知識にはこのようなことがあります。
意外にも、先生や演奏者を含め多くの方が、音楽の基礎知識が疎かになりがちです。
基礎がしっかり身についていないと、楽譜通りにそれっぽい音を出すことが音楽だと勘違いしてしまい、音楽の本質や、本当の楽しさに気づけなくなってしまいます。
音楽の基礎知識の詳細はこちらの動画にまとめてあります。
音楽の本当の面白さに触れるためにも、ぜひ、参考にしてください。
三味線の駒の位置について「正解は?」と聞かれると、多くの方が「音緒から指2本分、または3本分」と答えます。
本当にそれで良いのでしょうか?
正解は「駒の位置は環境、温度、湿度、曲、撥、弦、皮の状態、演奏場所、聴く人、季節、時間帯、表現したい音色に合わせて随時微調整する」です。多くの熟達者がそうしています。
駒の位置と音色に関しては、動画で録音してありますのでそちらを参考にしてください。
そのほかにも楽器の知識にはこのようなことがあります。
三味線の構造や仕組み、取り扱い、メンテナンスを含めたトータル的な知識が求められます。
順調に上達している方は、例外なく自分に合った楽器を正しく使っているのが特徴です。
もちろん、楽器についての本当の理解を深めるには、信頼できる先生から直接学ぶのが理想ですが、基礎的なポイントはこの動画にもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
安定した動作や痛めないために必要なことは、動作的なテクニックというよりも多くの場合"構え"です。
正しい構えを学んでいない人が本当に多いと感じています。
構えは、日本古来の「型(形)」であり、先人の知恵の結晶です。
最低限、右腕だけで三味線を支えられるようになっていることが求められます。
それを習得する方法の一つは師匠の所作を真似る「口伝」です。
観客は演奏者の構えの良し悪しを、思いのほか敏感に感じ取り、無意識のうちに「この演奏をしっかり聴こうか、それとも聞き流そうか」を判断しているのです。
つまり、深い稽古を積んでいるかどうかは、演奏そのものだけでなく、
**演奏以前の「自分自身の在り方」――すなわち「構え」**に表れるのです。
未熟な人ほどわかりやすいテクニックをひけらかしたり、
楽譜通りに正確に演奏することで上級者風に見せようとしてしまいますが、
「構え」の稽古を通じて「自分自身の在り方」を整えるほうが本質的な上達に向かうのです。
料理が上手な人は、味覚が研ぎ澄まされていて、味の奥行きや細かな違いを感じ取れるからこそ、美味しい料理を作ることができます。
音楽も同じです。
良い演奏をするためには、**「聴く力」**を磨き、音を繊細に、深く聴けるようになる必要があります。
そのためには、「聴く訓練」が欠かせません。
音を深く聴くために大切なポイントは、たとえば次のようなことです:
・音に関する知識を得て、特定の部分に意識を向けること
・先生や経験者と一緒に、聴く訓練を行うこと
・心と体の状態を整えること
・良い音色の楽器と日常的に向き合うこと
たとえば先ほどの「共鳴」を深く聴き取るには、
その仕組みを理解し、どこに耳を向ければよいかを知っておくことが大きな助けになります。
実際、音楽を演奏している方の多くが、
テクニックや楽譜通りの演奏にとらわれすぎていて、
「聴く」という音楽の本質的な力を育てることが、後回しになりがちです。
「音の聴き方」に関する動画を別にまとめていますので、
ぜひそちらも参考にしてみてください。
基礎が十分に身についていない方の演奏は、主に次の2つの傾向に分かれがちです。
(1)無闇に大きな音を出そうとして、“三味線を叩いてしまう”
(2)音をきちんと出せず、 “しっかり響かない”
それぞれ、典型的な演奏例をご覧いただきながら解説していきます。
まず(1)の「叩いてしまう」タイプですが、
その原因の多くは先ほど解説した「音色に関する知識」と「聴く力」が不十分なことにあります。その結果、“音を響かせる”という感覚が育たず、結果として「音程の正確さ」や「聞き取りやすさ」など、表層的な音の要素に意識を偏らせてしまいがちです。その延長線上で「強く叩けば音が通る」といった、力任せな演奏に陥ることが多く見られ、周囲からは「我が強く出ている」「自己主張が強い音」と感じられてしまうこともあります。
なお、このタイプの方の動作は「力の加減を繊細に調整できない」「瞬時に力を抜くことができない」という特徴を持ちます。
次に(2)の「しっかり音が出せない」タイプについて。
良い音色を出すには、弦を適切な力加減で押さえる必要がありますが、
多くの場合、押さえ方が不適切だったり、押さえすぎたり、力が弱すぎたりします。
また、先ほど説明した構えを含めた撥の持ち方の基礎が身についておらず、手首や指に負担がかかって痛みが出ることで、十分に音を出せないという方もいらっしゃいます。
このタイプの方の動作は「必要な力をしっかり出せない」「必要な部分だけを適切に動かせない」という特徴を持ちます。
加えて、本人は多くの場合で無意識なのですが、**「音を出すこと自体に不安や躊躇がある」**という心理的な側面も影響している場合があります。
多くの方は、先ほどの(1)や(2)のような課題に直面すると、
つい テクニックを無理に身につけようとしたり、必要以上に練習を重ねることで克服しよう としがちです。
しかし、これは逆効果になることが少なくありません。
そうならないためにも、演奏テクニックに入る前の、
**「動作の基本」**をしっかりと身につけることがとても大切です。
演奏における動作、つまりテクニックは、演奏ジャンルによってさまざまですが、
どんなジャンルであっても**共通して必要になる「動作の基本」**があります。
たとえば、
(1)の「叩いてしまう」ケースでは、
「瞬時に力を抜く訓練」や「力加減を繊細に調整する訓練」を行うことで、
音に柔らかさや深みが出てくることがよくあります。
また、(2)の「しっかり音が出せない」場合は、
「止める動作を身につけること」で必要な力を正確に出せるようになったり、
「必要な部分だけを適切に動かす訓練」をすることで、動作全体が安定してくることもあります。
このように、苦手な動作そのものを丁寧に見つめ直し、改善した上で
具体的な演奏の練習に入ると、驚くほどスムーズに上達する方が多いです。
ただし、身体の癖や課題は人それぞれ違います。
だからこそ、動作の原理をよく理解し、個々に合わせて丁寧に指導できる先生のもとで学ぶことが、とても大切です。
ここまで、演奏に必要な基礎や基本についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?
本当はもっと深く、時間をかけてお伝えしたいことがたくさんありますが、
この動画がみなさんの演奏にとって、少しでもヒントになれば幸いです。
今後も、より深く学べる内容を発信してまいりますので、ぜひ引き続きご覧ください。
私どもでは、楽器の販売、メンテナンス、カスタマイズのサポートに加えて、
素晴らしい音色で演奏していただくための稽古面での支援も行っております。
基礎の学び直しや、集中的な基礎の特訓稽古なども対応可能ですので、
ご興味をお持ちの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。